■ 魂の漫画 ■ 



※数が増えたら分離予定

【あしたのジョー】(ちば てつや)  ボクシングのリングだけに自分の生き場所を見い出した男のドラマ。 ライバルを殺してしまったことで自分もリングで燃え尽きる道を選ぶ。
 本来スポーツであるはずのボクシングではあるものの、拳闘という格闘技である側面が押しだされている。技術論はあまり押し出されていないが、それが反対に丈の天分を感じさせる。
 二大ヒロインは、きっちり丈に惚れるものの、丈は全く意に介さない硬派っぷりが貫かれている。逆にそれがあまりに切ない。
 丈がトマトだけ挟んだサンドイッチが好きなのを知った時は、ウンコ漏らしそうだった。 僕も大好きです!トマトサンド!バターもマヨも欲しいけど!
 パンチドランカー症疑惑を抱え、最後の闘いに臨みリングにあがるまでの展開は、僕には全く予想できてなかった展開で痺れまくった所。
 キャラとしては、ハリマオが好き。 まさにブランカの原型であろう。
 同じような鬼気迫る展開を持つ近年の格闘漫画としては、『軍鶏』がある。 こちらは、スポーツ的に進化した格闘技を殺し合い的に駆け上がる漫画で、なかなかよかったのだが、
 狂った展開に行き場を失った漫画である。

【空手バカ一代】(梶原一騎・つのだじろう) 言わずと知れた故人・大山倍達の生涯全盛を描いた漫画。 過剰表現すぎるが、ソレがいい。
 弾丸を普通に避け、指一本でプロレスラーをねじ伏せる。 『これが空手か!ダンスではないか!』と伝統派空手の大会であっさり優勝。しかも、なでたくらいの一撃で病院送り。
 牛と戦い、ヒグマと戦い、一番弟子は破門後、自動車事故で死亡。(やけになって自殺した) 893を過剰防衛で殺してしまい、家族へのつぐないとして牛馬となり働く。
 すべてが過激。 アニメもかなり忠実な流れなのだが、どうも毒が足りない。当たり前か。 漫画では全ての出来事に『これは事実である』と書かれている。
 後の様々な著書で事実でない部分が明らかにされていくが、大山倍達伝説はそんなものでは揺るがない。 そして近年、大山は、朝鮮人であることが判明。
 当時のゴタゴタは、これが一番大きな原因であったように今になっては思える。 中国から伝わって琉球で育ったはずの唐手だったが、実は今席巻しているフルコン空手は、
 韓国武術が発祥だったことになる。 大きな問題なはずなのに何の問題にもならない。 さすがマスオオヤマ。伝説の男は何があっても揺るがないのである。
 漫画の空手バカ一代は、一般的には、ゴルゴ13のさいとうたかおに作画が変わる後半が人気があるが、僕はまったくの『つのだじろう』派である。

【炎の転校生】(島本 和彦) 今となってはカルト漫画家となってしまった島本和彦のデビュー作。 どうしようもないくらいまとまってないし、恥ずかしい展開山盛り。
 どこをどう切っても仮面ライダーが見え隠れする学園漫画。 途中から格闘漫画という位置付けになるくらい、なんでも戦闘で決めごとをする『弱肉強食』を基本とした漫画。
 裏の教育委員会の使者として、問題がある学校に次々と転校し、戦闘で問題を解決していく漫画というと面白そうだが、そうなったのは途中からであるw
 様々な学校を転校しまくるが、母体は『弱肉学園』であり、弱肉学園の校則にしたがって問題を解決している感がある。 大陸学園の登場から漫画は著しくレベルアップ。
 がぜん面白くなる。 暗黒流れ星を使う宿敵・伊吹園二郎、褐色のおじさん、技北先生、炎の転校生2号、ブラック滝沢、そのすべてに大爆笑、以後認められていく島本のすべてが
 そこに凝縮されている。 しかし、あまりにつまらない導入部が、アニメ化しつつも認められるところまで走り抜けることはなかった。

【風の戦士ダン】(島本 和彦・雁屋 哲) 炎の転校生執筆中に始まった月刊漫画。島本漫画では珍しい原作付き漫画。
 雁屋 哲といえば大ヒットを飛ばした料理漫画・おいしんぼの原作者である。 さすがに行き当たりばったりの漫画を描くことで有名な島本も、さすがに原作付きなせいか
 軸はしっかりとしたバトル漫画である。 しかし、どこまで真剣に原作を読んでいたのかわからないくらい島本色べったりな漫画になっている。
 しかも、ギャグキャラとシリアスキャラが混在しており、まとまりもなく、結局、中途半端なギャグ漫画になってしまっているところがある。
 しかし、これも炎の転校生同様、人食いカビの奪い合いから、殺し合いガスの奪い合いに変わった辺りから(本当に終盤)著しく漫画がレベルアップする。
 以後の島本漫画の原石として今も心に強く残っている。

【燃えるV】(島本 和彦) 週刊少年サンデーに連載した島本漫画で、珍しくきっちりまとまって終了した最初で最後の作品w
 とても軽い発想で攻撃的な性格・恵まれた才能・ド根性で、テニス界を格闘交じりであがりに上がりきる、爽快なストーリー。
 感動的な場面はないが、その爽快な主人公・ブイの活躍が作品全体の爽快感を上げている。 島本漫画らしく、テニスを知っている必要は全くない。
 永遠のライバル・赤十字が、とてもいい味を出している爽快な作品。 この作品でも、仮面ライダーネタが出続けているのが恐ろしい。

【仮面ボクサー】(島本 和彦) 
ヤング・キャプテンという発刊して、瞬く間に廃刊した少年雑誌キャプテンの青年雑誌に連載された漫画。
 超看板漫画なのだが、まったく青年性はない。 題名通り、仮面ライダーのパロディである。 ヤング・キャプテンの廃刊は、誕生時点が分かっていそうなものだった。
 青年誌における仮面ライダーパロなど本末転倒な内容になるのは、火を見るより明らかなのになかなかまとまった作風である。
 それもそのはず、恐ろしいほどの書き下ろしを引っさげて単行本化された。 なぜ廃刊雑誌からコミックがでたのか不思議といえば不思議ではあるが、
 5話で愛蔵版一冊なのだからその濃厚さは、分かってもらえるであろう。 試合は、打ち合いもなく必殺パンチの応酬のみだが、人生を賭けたパンチがぐっと物語を盛り上げた。
 まったく同時期に、島本は『挑戦者』というギャグがほぼゼロという超シリアスなボクシング漫画を描いていたのだが、今となってはこちらのほうがしっくりくるのは皮肉な話である。
 また同時期にアスキー雑誌にワンダービット(科学漫画。いつもどおり仮面ライダー化する。)、インサイダーケン(ゲーム漫画)なども連載していたが、 
 面白いもののギャグは少なかった。 やはりキャプテンで大ヒットしていた『逆境ナイン』(序盤は名作だが、終盤はメロメロ)に情熱が注がれていたのかもしれない。

【ジョジョの奇妙な冒険】(荒木 飛呂彦)  魔少年ビーティー、バオー来訪者、ゴージャスアイリンで名を上げてきていた荒木飛呂彦が
 以後短編以外は、ずっと描き続けている長編漫画。 今や7部を超えてしまった。 一部、一部完結しているため、どこまで一関連の長編と見るかどうかは微妙。
 個人的には、第二部・第三部・第五部・第六部終盤・第七部は名作だと思っている。 荒木飛呂彦は、ドラえもん的永遠感のあった第四部がお気に入りらしく、
 その手の固定キャラが出続ける危惧はある。 第二部に代表される少年漫画的盛り上げ方は、得意としているのか非常に盛り上がる。
 この辺りが、クソ展開になっても見捨てられない恐るべき実力である。
 映画のパクリなど、いろいろ言われるが、心
に染みるエピソード・勇気にあふれる主人公・頑張った末の意外な結末など、作者が言う人間賛歌に偽りはない。

【柔道部物語】(小林まこと)  高校3年間を柔道部活動に燃える男達の話。妙な間のギャグも面白い。吹奏楽をするはずが、なぜか柔道をやりはじめ、
 数々の挫折と数々の汗と涙を乗り越えて日本一になっていく様が丁寧に描かれており、飽きないまま輝かしい三年間が過ぎていく漫画。
 『帯ギュっ』と比較されることもあるが、大きく水を空けてこの『柔道部物語』が素晴らしい。 これほどしっかりと部活生活を描ききっている作品は、
 他には『ドカベン』や、『うっちゃれ五所瓦』(これらも捨てがたい)くらいなものである。 はじめの一歩のジムメイトは、この漫画が参考になっている気がしてならない。

【グラップラー刃牙・BAKI】(板垣 恵介)  言わずと知れた孤高のカルト格闘漫画。 ここまでの格闘オタクが、その知識を漫画として成功させた珍しい例ではある。
 主人公の周囲が秘技・奥義を持ちすぎていて、あまりに強く誇張されすぎて、主人公がかすんでいる。 リアルな敵に漫画チックな主人公が闘いを挑むという部分がある。
 漫画チックな主人公の割に特別な必殺技は持っていない。 主人公が相手の土俵で戦うことで、懐の深さを見せるプロレス的(猪木的?)漫画。
 胴回し回転蹴りをカウンターに使ったり、指を狙うパンチなど非常にマニアック。 馬場との大一番、大猿との対決、花山戦、最大トーナメント、死刑囚まで
 神がかった面白さを体現していたのだが、死刑囚との闘いの最中でパワーダウンした。 以後、漫画チックな展開のまま現在に至る。
 個人的ベストバウトは、花山薫vsオロチ克美戦。花山薫だけで腹がいっぱいになる漫画。

【餓狼伝】(板垣 恵介) 夢枕獏の同名小説の漫画版。 序盤こそ小説に添った漫画であるが、中盤からオリジナルキャラでまくりだし、話も異質で、
 まったくの別物として話が展開している。 しかし、グラップラー刃牙では、秘技の応酬という展開であった格闘シーンが、リアルな描き込みで展開され、
 格闘家としてのすごさは、語りで描かれるスタイルが非常に印象的で、それはそのままバキにも応用されている。(むしろそれが嫌なのだが。別物のほうがいい。)
 バキのような夢の対決ではなく、リアルにどう話が展開されるのかまったく読めず、(原作とは違いすぎるし)楽しみでしょうがない作品なのだが、
 当初のコミック・バーズ(スコラ社。倒産。)から始まり、ヤングマガジンアッパーズ(講談社だけど廃刊)、短期連載で週刊マガジン(ライバル週刊誌に垣根を超えて連載を持つのは珍しい)、
 そしてイブニングへと不運が続き、連載再開されたものの、謎の休載になった。打ち切りされそうなものなのが、ここまで生き残るのは、作品がもつ底力なのだろう。
 ストーリー的に原作とは別の行き詰まりを感じざるを得ない展開になっているのも事実で、復活してほしいものの、復活できそうな展開でないのは事実である。
 個人的ベストバウトは、文七vs風間戦(文七の突き上げ掌打。) 、 長田vs工藤(雛落とし。見事なり。) 

【はじめの一歩】(森川ジョージ) 
恐らく、森川ジョージのデビュー作。もう、20年以上連載が続いている。
 いじめられっ子の一歩が、強さに憧れ、超不良なジムメイトと、名泊楽の会長、絶対的なライバルに支えられ、ボクシング街道を突き進む堅いボクシング漫画。
 荒木飛呂彦の絵や、この森川ジョージの絵は、僕の落書き人生を揺るがすほどに影響を受けた作家なのだけど、だれも信じないので、まぁ・・・・いいだろう。
 ジムメイトの鷹村が世界戦を獲ったころから、脇道に反れ、一歩関連は助長の一途で金のために会社が延命させているとしか思えない展開の漫画になってしまったが、
 一歩が新人王を獲得するまでは、神がかった面白さであり、20年経った今でも根強いファンが生まれ続けている作品である。

【ちょっとヨロシク!】(吉田 聡) 
湘南爆走族と並ぶ吉田聡の傑作漫画。 湘南爆走族が反社会的な漫画のはずなのに超絶名作であったように、
 この漫画も一風変わったギャグ漫画であったが、週刊少年サンデーの歴史に燦然と輝く名作ギャグ漫画である。 湘爆はギャグ・シリアスの交互っぽい漫画だったが、こちらはギャグ一筋。
 それでも学生生活という限られた時間でのセンチメンタルはちゃんと盛り込まれている。 あらすじは、番長である苺谷が、天才転校生・羽田に嫉妬し、羽田と間違われる不運な花田を
 巻き込んで、次々と新しい部活を設立し、ドタバタ騒動を起こしていくコメディ。 ウェイトリフティングや、演劇、ゲートボール、カーリング、クロスカントリースキー部など、
 当時注目されてなかったジャンルまで取り込んでいて、とても新鮮な漫画だった。 どんなに馬鹿ウケする話でも、少しセンチな部分を入れ込む吉田風味がとてもすばらしい。

【1・2の三四郎2】(小林まこと) プロレスファンの学生が、様々なスポーツをプロレスで席巻し、いづれはプロレスラーそのものになってしまう1・2の三四郎の続編。
 初代の1・2の三四郎では、柳というキャラが、腕取り回って体落とし風投げ=柳スペシャル(横に回転して投げられてしまう背負いで受け身が取れない)を開発し、絶対的必殺技として君臨していた。
 その柳スペシャルは、リアル世界で佐々木健介が逆一本背負いとして使用、カプコンのマッスルボマーではサンセットスプラッシュとして登場した。・・・・とはいえ、1・2の三四郎2とは関係ない。
 柳はプロ柔道家として登場するが、柳スペシャルを使う場面はなかった。 2のあらすじは、海外修業から帰ると古巣のプロレス団体が潰れており、ファミレスの店長をして生活していた三四郎に、
 復帰の依頼が来て、断りつつも徐々に闘魂に火がついていく話。 連載時期は、ちょうどプロレスが格闘ブームに押されていて、なんちゃって格闘プロレスや、
 本当の格闘技に人気を奪われてジャンルが衰退していく状態だったので、とてもタイムリーな題材を扱った作品になっていた。
 格闘プロレスへのアンチテーゼがふんだんに詰め込まれており、格闘技なら格闘技、プロレスならプロレスをちゃんとやろうという姿勢や、
 なんちゃって格闘プロレスなんて、所詮、偽物格闘技なんだから、ちゃんとプロレスを向き合ってきたやつらが弱いはずないだろというプロレスファン心理・願望が見事に描かれた名作であえる。
 ただし、古本屋では大量の1・2の三四郎2が安価で売買されている。悲しいものである。

【アグネス仮面】(ヒラマツ・ミノル)  助っ人外国人を描いた名作野球漫画『REGGIE』のヒラマツ・ミノルが描いたプロレス漫画。
 ビッグコミックスピリッツに連載された。花形である。 なぜか武藤敬司が監修を務めた。 小林まことの1・2の三四郎2は、格闘技ブームで押され消されしようとしていたプロレス界を
 見事に描いた作品だったが、こちらも同時期にあたる作品ではある。 しかし、格闘ブームにあえいでいる様ではなく、自分のことしか考えてないプロレスラーという人種を見事に
 描いており、奇想天外な発想をする人たちが集まって、奇想天外なプロレスを展開しているだけの漫画。 それでも、プロレスファンにはたまらない名作。
 故人・三沢光晴をして、『プロレスラーの心情を描ききっている』と言わしめた。 悲しいかな古本屋では、恐ろしい数のアグネス仮面が安価で売買されている。またかよ。プロレス漫画はダメなのかな。
 橋本信也としか思えない町田清、カリスマ性抜群のロイヤル金村、説明不要2代目ジャイアント安藤、そしてマスオオヤマとしか思えない天地拳総帥。
 キャラ立ちしすぎて、話が進んでなくても面白い作品なのに・・・・。
 かつての名作・プロレススター列伝は、恐るべき超人伝説漫画だったが、ついに超える漫画が出たと言える。

【プロレスメン】(ジェントルメン中村) ここまでプロレス漫画を引っ張ったらどうしてもプロレスメンは、はずせないところ。月刊ヤングマガジン連載。
 この漫画は画力も低く、ギャグもどうかなと思うところはあるのだが、それもそのはず、プロレス的ホッコリ漫画なのだ。
 ドリーとヤッコが結成するホームレス・ウォリアーの怪物っぷりを、付き人の虎馬俵太がイイ具合にビックリしまくる『プロレス的ホッコリ』漫画なのである。
 実はこの漫画、プロレスの試合のシーンはあまりなく、どちらかというと試合前後の控室の風景が描かれている。
 プロレスラーの凄味を、なおさらそう見えるように動いて、更にそれに意味があるという、プロレス界の裏を 『ホッコリ』 と描いた名作である。
 これまたプロレスファンにしかまったく通用しなさそうな内容に、プロレスファンはグッとくるに違いない。

【ベルセルク】(三浦健太郎) 超絶有名なファンタジー漫画。ヤングアニマルに掲載。クソ太い雑誌アニマルハウスで始まった瞬間ファンになった。
 人より大きな鉄板のような剣を操る剣士の復讐劇なのだが、物語は収束に向かうどころか世界はどんどん広がるばかりで、一向に収束を見ない。
 鉄と火薬にまみれて怪物と闘う序盤は、本当に神がかりな面白さで全力で追っていたのだが、回想に入り、『触』を見せた後の冒険が、
 とてもゴッドハンドに近づいているとは思えない展開ばかりで、追いかける気力を失っていたら休載になった。
 これは、まったく同じような展開を辿っている先駆者がいる。 それは、『強殖装甲ガイバー』。 ギガンティックを手に入れたガッツ。
 さて両者はどうなっていくのか。追ってはいないが、仮に完結するのであれば、どちらも途中から通して読みたいとは思っている。

【シグルイ】(山口貴由・南條範夫) 名作『覚悟のススメ』の山口貴由が南條範夫の短編を原作に逆依頼で漫画化した意欲作。
 駿府藩
主・徳川忠長の御前で催された駿府城御前試合十一番勝負のうちの一試合を描いた壮絶な作品。
 復讐劇のわりにあっさりとした原作ではあるが、元々リアルな戦記のような迫力はある。 それに更に肉付け肉付けを施し、元々持っていた山口の残酷描写も働いて、
 他に類をみない残酷漫画と化した。 オリジナルキャラも数多く登場しているものの、十一番勝負の他の登場人物を物語に絡めてきている辺りのクロスオーバーは、
 板垣恵介の餓狼伝にも通じるものがあり、好感がもてる。 ただし、風呂敷を広げ過ぎた感もあり、中途半端な登場をしたまま放置されたキャラもいる。
 神速を可能とした描写や、簾牙、紐鑑、飛猿、無明逆流れなどの神技の描写も、アイデアがふんだんに盛り込まれて、
 事細かに描かれている。神がかった完成度のまま物語が終了となったが、終わり方が謎めいているという意見もある。
 たしかに漫画では意味深な表現が多かった気がするが、原作は真っすぐに残酷な結末であり、原作を読めば疑いようのない結末を知ることができる。

【虚無戦史ミロク】(石川 賢) 永井豪本人なんじゃないかと思えるほど、作風が同じだった作家、石川 賢(故人)。
 名作・魔獣戦線あたりで、凶暴残虐描写+話がインフレ〜収まりつかないという、もったいなすぎる作風を確立。

 ゲッターロボみたいなロボ漫画で、なぜインフレ脱線していくんか不思議だが、きっちりインフレ崩壊していく。 このミロクも、例外ではなく、インフレ崩壊を起こす。
 ただ、魔獣戦線で培った凶暴残虐描写がスパイスとして生きており、奇想天外な忍法が炸裂する、なかなか強烈な忍者漫画。
 話がインフレ崩壊さえしなければ、名作中の名作足り得たと思うのだが、最後には、やっぱり凡作として消えていく運命を辿った。
 空間を切るという主人公の忍法の胡散臭さとカッコよさは、秀逸で、序盤は、すばらしくイイ。
 先の読めない、スリリングな漫画を描くセンスは、本当に素晴らしく、永井系B級アニメを作るには欠かせない作家だったのに、
 まるで、自分の漫画の扱われる流れと、石川氏の人生がダブるかのごとく、その生涯をとじてしまった。 ご冥福を祈るばかりである。