■ 魂の格闘家 ■
【ヒクソン・グレイシー】 400戦無敗を謳い、結局度重なる誰との対戦でも結局負けなかった生ける伝説。
総合格闘も、技術が進化・浸透し、いまやスポーツとなりかつての血なまぐささは、全く感じないが、
その血なまぐさい殺し合いの空気の中で、まるで庭でも散歩するかのように、
全く面白みも何もない動作で確実に絞め決めてしまう男。
実は、強くないとか大した技術ないとか、格闘ファンでは語り草になっているが、実際、日本でトップだった格闘家を
ほぼ総なめにし、バリジャパの二年連続優勝をひっさげて、日本のプロレスを二年で終わらせてしまった張本人。
日本格闘界、日本プロレス界において完全なる黒船であった。彼の登場より、プロレスは完全に格闘技ではなくなったのである。
ブン投げられても難なく着地してしまうバランス、83kgしかないのに大男を振り回してしまう怪力。
グレイシー柔術は確かに総合的なすごい格闘技だったんだろうけど、ほんとうに強い男は、何も習ってなくても強いのである。
我々は、ヒクソンが負けたところ以前に、相撲で負けた姿をみたことがないのである。
【ホイスグレイシー】 UFCでの優勝から、グレイシー柔術の強さを満天下に知らしめた張本人。
ヒクソンの実弟。 ドン臭い動きながらも、連戦連勝。
桜庭和志に負けてからは、完全に勢いを失うが、引退するまで、大怪我をして大敗ということはなかった。
それだけでもすごい。
【ボブサップ】 規格はずれの大男で、そのインパクトたるや強烈すぎた。
怪力だけでここまでインパクトを残せた功績はデカイ。 頭がよく、タレントとしての価値も大きかった。
そのままプロレスに流れて活躍するのが道であったと思うが、
テクニカルな格闘の方向に進んでからというもの、パンチアイともいえる極度のビビり症に陥って、商品価値が失墜した。
【大山倍達】 誰もが知る空手の代名詞ともいえる伝説の空手家。
在日の方である。山籠り、ビール瓶切り、自然石割り、コイン曲げ、親指による逆立ち、氷柱割りなど、
伝説をあげれば枚挙がない。中でも、闘牛との対決、熊との対決、弟子の自殺、過剰防衛による殺人などは、
どこまでが漫画のフィクションなのかわからない。 実は空手家として大したことないとか、本当は弱かった、
なんて逸話もあるが、あの話口調、あの拳、あの体で、人間的に弱いはずがない。
そして、小さいとはいえ牛から、裸一貫でテイクダウンを取れる男であったのは間違いない。
すさまじい怪力である。 空手なんて関係ない。 強い奴は強いのである。
強すぎる突きは、ガードしている骨まで破壊してしまうのである。
【ジェラルド・ゴルドー】 総合の試合に出まくっていた空手家。
ル―ル無用、急所狙いも関係なしの悪者視されている選手。
しかしである。 総合で、極力グランドに付き合わず、体制を整えようと動いた瞬間を打撃でとらえるという、
まさにこれが空手であるというスタイルを見せつけてくれた空手家。
顔面蹴りも、鼻や眼底を確実に狙ってくる、あまりに危険すぎる殺し屋である。
【イゴール・ボブチャンチン】 類まれなるパンチ力で一世を風靡した格闘家。
無茶苦茶大振りなテレフォンパンチであるロシアンフックがなぜかヒットする不思議。
大振りな滅茶苦茶パンチと、ラフな膝蹴りだけで、大物を倒してしまうアルティメットボクシングの
完成形を見せてくれた選手。 前のめりにタックルを切り、打撃で打ちのめすスタイルが一気に浸透した。
霊長類最強と言われたマーク・ケア―を秒殺したのが懐かしい。
【桜庭和志】 日本で生ける伝説を作りあげた根っからの格闘家。
プロレスラーとしては、まったく華が無かったが、粘り強いレスリングと大胆な打撃センスで
一時代を築いた。 強豪をなぎ倒した揚句、ホイスグレイシーをも撃退してしまった功績はあまりにも大きい。
モンゴリアンチョップを総合に持ち込むなど、パフォーマンスセンスは非常に素晴らしいものがあったが、
頼りは、粘りのレスリングなので、対策されてしまった選手。
【藤田和之】 猪木イズム最後の継承者といわれたプロレスラー。
タックルとパウンド、ヘッドロックくらいしかしなかった不器用すぎるレスラー。
才能にあふれ、その技は大迫力なのだが、それしかないという困ったくらいつまらない試合をする選手だった。
それが、スピアタックルから、ひざ蹴りKOを軸に総合で活躍しだしてから評価は一変。
プロレス界を代表するチンピラになった。総合にでてもあっさり勝利をもぎとってくれる貴重なプロレスラー。
【小川直也】 柔道の世界覇者からプロレスに移行。
どうしようもないブタ柔道スタイルだったのだが、肉体改造からセームシュルトを思わせるシュートスタイルに変貌。
プロレスでは、大外刈りとラリアットを複合した小川トルネードの切れ味が凄まじすぎた。
総合でも十分対応できる懐があるのが魅力。
北尾のようにプロレスでほされてしまう運命であったのを、橋本真也に拾ってもらったわけだが、
橋本がなくなってしまい、総合もでなくなった今となっては、華がない。
【武藤敬司】 才能に溢れた完全なるアメリカンスタイルのプロレスラー。
日本で人気を得る前に、アメリカでキャラレスラー・グレートムタとしてブレイクした。
逆輸入という形で、日本に凱旋したものの、キャラ戦略から逸脱し、素顔でファイトするベビーフェイスと、
グレートムタでのヒ―ルという二面構想が定着した。
格闘的な強さは、語るに至らないが、190近い巨体にして、ネコ科を思わせる運動能力、
あらゆるレスラー・総合格闘家に対応する対応能力が素晴らしく、
それらをすべてオールドプロレスな技で返していくセンスがたまらない。
まるでプロレス技がすべての格闘技に対応しているかのような錯覚すらある。
ムーンサルトプレスの第一人者であるが、両膝の皿を失っている。
フランケンシュタイナー、ドラゴンスクリュー、低空ドロップキック、シャイニングウィザードでプロレス的なムーブメントを作りあげた。
団体の生き残り抗争を賭けた高田延彦との2戦や、NOW総帥として満身創痍でIWGPを防衛をこなした試合の数々は、
生きる伝説とも言える試合であった。
【橋本真也】 闘魂三銃士の中でも海外修業の時間が最も短かく、日本で活躍し続けた新日本プロレスの強さの象徴であった男。
プライドが高いのか相当なトンパチキャラであり、試合内容的にルール無用な立ち回りが多く、破壊王の名をほしいままにした。
太った巨体ではあるが、ストライカーとしての才覚があり、中でもレガースもつけずに蹴りまくる中段廻し蹴りが
音を聞いただけでも凄まじく、爆殺シュ―タ―と呼ばれるのも納得の説得力があった。トニーホーム戦以降身につけた水面蹴りも
巨漢とは思えない、とても切れのある技だった。
打撃だけでなく、DDTや垂直落下式DDTの投げ技も非常に安定した威力があり、トンパチな橋本の性格もあり、
相当な危険技であるようにしか見えなかった。
プロレス界きっての大スターに成長しつつも、本当は強くないのではないかという声も少なくはなかったが、
ケーフェイに頼らず、体力勝負で決着をつける流れは、この橋本や健介のまっすぐな性格が押し上げた流れであるように思う。
プロレスが八百長であるとけなされると憤慨したくなるファンは、紛れもなく橋本も大好きだったのである。
旧全日本プロレスの四天王との『夢の対決』も非常に楽しみであったが、三銃士の中でも最も接触がすくないままこの世を去ってしまった。
【天山広吉】 闘魂三銃士とほぼ同年代であるが、一世代下という風に表現されている世代の中心レスラー。
デビュー当時から恐るべきタフネスぶりと、器用な技を使いこなした。
この世代の連中は、長州力の引退時期と重なり、長州を模倣したスタイルの選手ばかりで、個性確立に時間がかかった。
その中では、早くから牛をモチーフにモンゴリアンチョップ、ムーンサルトプレスを使いこなし、個性をはなっていた。
ダイビングヘッドバット、ツームストンパイルドライバー、アナコンダバイス(変形けさ固め)で個性を更に強めていったが、
体を壊し、長期離脱〜復活を遂げた。
命をかけたダイビングヘッドバットでG1を制した時期が、佐々木健介が長州コピー+嫁北斗原爆でブレイクした時期と
重なってしまったため、ブレイクする時期を完全に逸してしまった。 そして現在を迎えてしまっている。
いいレスラーなのに、売り込み失敗した例である。 なお、この世代のレスラーは、誰もかれも優しい性格をしており、
トンパチ行動や、派手な言動は、ほとんどない。 これが何でもこなせるが、個性が目立たない原因だったのかもしれない。
【佐々木健介】 闘魂三銃士とほぼ動機の元新日本プロレスのレスラー。
馳とのタッグや、パワーウォリアーとしてロード・ウォリアーズと絡んだタッグで名を馳せた。
シングルではイマイチ華がなく、あくまでタッグ職人として生きていたパワータイプのレスラー。
バックボーンとなるスポーツをまるでやってないので、器用なタイプではない。
小柄ながらに体をありえないほど鍛え、とかく練習好きなプロレスラーということにプライドを持っているタイプ。
UWFと新日本との潰し合い戦争が勃発した際に、プロレスを舐める奴は許せん!と全面に出てったあたりから
シングルとしても目立ち始め、パワースラム、ストラングルホールドγ、逆一本背負いで試合を組み立てていた部分に、
長州の引退時期から長州の模倣を始め、小川戦を意識した辺りからの総合修行、
女子プロレスラーにしてあらゆる技のパイオニアであった北斗晶との結婚から北斗原爆を
フィニッシュホールドにした辺りから、安定しすぎる強さになった。
長州模倣タイプの中では最も完成度が高いラリアットを放つ。北斗原爆は、元祖である嫁にとってはつなぎ技であったが、
得意のパワースラムの要領で『入り』が非常に難易度が低いうえに、橋本真也の垂直落下式DDTを参考にしたと思われる
安定した必殺技に仕立てあげたのは、立派な部分。 恐ろしい実力を備えた名選手に育ったが、
現在は実力・キャラともに安定したタレントレスラーである。
【山本"KID"徳郁】 レスリング一家で育ち、自身のレスリングの経歴も華々しいが、小柄である。
幼少時の食事制限により大きくなりにくい体質で、60kg級であるが、70kg級の総合、K1ルールともに大活躍した。
右フックと左ストレートのキレがハンパではなく、パンチでの豪快なKOが魅力。
ありえない速度のKOを数々みせてくれた。総合でもK1ルールでも王者となり、魔沙斗からダウンを奪うなど、
大躍進を見せた。 しかし、レスリングに再挑戦した際に右肘を脱臼し、長期休業。
その後は、階級に拘りつつも負けが増え、豪快なKOはほとんど見られなくなった。
【マイクタイソン】 昭和後期を代表する、ヘビーパンチャー。ボクサー。
ヘビー級にしては小柄だが、恐ろしいパンチ力でKOの山を築いた。
トレーナーのガス・ダマトの指導が神がかっていたという話も、シンプルすぎる戦法と
タイソンの奇行により、名ボクサーとしての名はだんだん薄れていった。
石でも握り込んでいるのではないかと思わせるほどのパンチ力は、いつまでたっても健在で、
パンチ力の恐ろしさを世に知らしめた偉大な男である。
【ジェロムレバンナ】 K1を代表するハードパンチャー。K1に関しては無冠の帝王。
フランスでキックボクサーとして頭角を現し、故人マイク・ベルナルドと共にK1に彗星のように
デビューした。 まだ佐竹雅昭がK1で優勝してくれないかと日本人が願いまくっている頃、
初出場のK1で、決勝まで上り詰めた実力者。
とてもキックボクサー色の強い選手であったが、兵役で一時期現役離脱し、
復帰後は、非常にボクシング色の強い選手として、活躍。ボクシングの試合にも出場した。
相手を追い詰めるワンツーの旨さで敵なしと思わせたが、直線的な動きを攻略されてしまい、
結果的数値だけみればK1で華々しい戦績を収めてはいない。
言葉に衣をきせぬ発言力、パンチで追い込む爆発力、打ちあいになっても逃げない精神の強さ、
すべてがカッコいい選手。