ストリートファイター3
■ 何をもって名作とするのか ■
カプコンは、スト2をヒットさせた。 スト2は、対戦格闘ゲームというジャンルを打ち建てるほど大ヒットした。
当然スト3は、ストリートファイターを冠する3作目である。
期待するなという方が無理ではないか。
誰もが新時代の到来に胸を躍らせる、はずなのである。
しかし、スト3、すくなくともスト3の1stはヒットしなかった。
スト3の1st。 3−1ということになる。 なんのことなのか。
初代スト3は、システムそのものが完成しないまま発表された『残念』な作品である。
カプコンのCPシステム基板がCPS2からCPS3に進化して、その目玉タイトルだったがヒットしたとは言い難い。
出回ったCPS3を牽引したタイトルは、皮肉にもジョジョの奇妙な冒険だったように思う。
間をあけずにスト3は、3rdまで三作でた。時期尚早にでたスト3を、2nd、3rdとバージョンアップさせながら完成を見た。
3rdは、コアな人気があり、本当に最終的な結果だけみれば、『成功した』のかもしれない。
(以後、区別が必要な場合は、スト31、スト32、スト33と標記)
しかし、一般的にどれだけ認知され、どれだけプレイされた作品だというのか。
パッと見と違って、スト3は、スト2との差別化を図るため、恐ろしいほどの手心が加えられている。
そしてそれが、究極のマニアゲーを生みだしてしまったわけなのだ。
とんでもないゲームなのだ。極めんとするならば、3D格闘なんかよりもよほどの覚悟がいる。
僕は、一般的に見れば、このゲームを相当な時間やり込んでいる。
しかし、功が成ったと感じた瞬間は、ほとんどなかった。 そのマニア性とはどこにあったのか。
■ 技が当たらない?! ■
美しく恐ろしいアニメパターン数を誇り、その弊害で、そこそこ高速な格闘ゲームのわりにはモッサリした動きである。
それ以外は、基本的にスト2のゲーム性から逸脱してはいない。 操作系も同じ。そう、変わらないはずなのである。
スト2から思えば、フロントステップとバックステップが付いた。便利な限りである。
近年のゲームほどバクステが強いわけではない。
実は、スト31が発売された当時、3D格闘がブレイクを起こしていたことや、格闘ゲームが飽きられてきていた時期でもあり、
スト31は、あくまで沢山でている格闘ゲームの一つでしかなかった。
すさまじいインパクトを与えることはなかった。
そこで、いきなりスト31をプレイする。 飛び蹴りしてみる。 これが当たらないのである。 当たりにくいのである。
なんでこんな現象が起きるのか。
ストゼロ2の頃のカプコンゲームは、かなりシェイプされた判定ではあったが、
攻撃判定の出ている時間がかなり長かった。 それは、無敵のあるゲージ技に頼ったゲームとしては、
システムを有効に運用するのに都合のいいつくりをしているのだが、ゲームがとてもデジタルな感じになる。
意外要素が阻害されていることに不満の声も多く、もっと絵に則した判定が良いという声があった。
ゼロ2のダンなんかは、パターン数が少ないのにパターンに則した判定がつけられており、
リーチの長い絵の時しかリーチが長くないので非常に当てずらい。
これとまったく同じことがスト31で起こる。 キャラの動きは、縮める・伸ばすことで表現するものだが、
ダイナミックなアニメパターンを採用したスト3では、キャラアニメの伸び縮みは大きい。
それはそのまま、技のリーチの伸び縮みが大きいということであり、技が当てづらいのだ。
これは、数か月後に登場したスト32で大幅に改善される。 よかったと考えるべきか、他と変わらなくなったと嘆くべきか。
■ 2D格闘ならしゃがみガード ■
スト2が作ってしまった常識というか、2D格闘ならばしゃがみガード安定。
上段攻撃はスカり、下段攻撃はガードになる。いわずとしれた話である。
しかし、しゃがみガードは、ゲームのアクティブさを欠く。
それを懸念してか、スト3は、比較的下段攻撃が弱い。
上段攻撃や中段攻撃のほうが圧倒的に強い攻撃が多いとはいえ、2Dでは下段攻撃が安定してしまう。
その点、このゲームの下段は、かなりリーチが短く、キャンセルが効く攻撃が少ない。
リープアタック(小ジャンプ攻撃)も、しゃがみ喰らいすると他の大きな攻撃が確定してしまう。
これは、実は大きな変化であり、同時期に可動していたストゼロ3のプレイスタイルにも影響を及ぼすことになる。
3D格闘のようなアクティブな対戦が生まれたのである。 以前からあったわけが、一般化したと言える。
その功績でスト3が上げられることはまずない。 スト32以降、下段の有効性もそれなりに増し、
立ちガード安定!とまでいえるゲームではないので、その中途半端さが、その功績を認めさせないのだろう。
3D格闘ばりに中段攻撃を増やしてしまうというほどの大胆な改造には、スト4になっても至っていない。
■ 男ならブロッキング・使えないなら使わない。永遠に続くテーマ ■
これは○○をするゲームである。と説明できるゲームはシンプルで受け入れられやすい。
スト3は、ブロッキングで攻撃をかわし、反撃できる逆転要素の強いゲームである。
これである。このはずなのである。
しかし、現実はそんなに甘くない。
スト33になるころには、神ブロと呼ばれる、すさまじいブロッキング(以下ブロ)を披露してくれるプレイヤーが増えた。
連続ダメージを与える攻撃をブロッキングするのは並大抵の努力では、成し得ない。
まずとっかかりとして、不意に撃たれた波動拳をブロ。普通の飛び蹴りをブロ。通常技対空を空中ブロ。(空中ガードはないが、空中ブロは可能。)
飛び蹴り〜足払いの足払いをブロ。
これができないとお話にならない。世界が変わるとっかかりは、この4つ。
最初はこれでいい。レバー6or2をコンと入れるだけで、反撃のチャンスを得ることができる。
僕を含める、ブロッキングなんてできない!というプレイヤーでも、これくらいはできる。
逆にこれくらいできないと全く勝てないゲームである。
ブロを決めても、反撃のチャンスは、8フレ〜12フレ程度しかないので、短いチャンスを生かすため、
予め反撃のレシピを確立していなければ、どうにもならない。投げキャラなら、コマ投げを仕込むのが一番楽。
すさまじいブロッキングができても、その反撃の時間はすさまじく短いので、相当な鍛錬をつまなければ、
美しい反撃を展開することはできない。 初心者が、大きな反撃を狙うのは無理なのである。
ブロッキングという防御システムを強化したせいか、スト3は投げがなかなか強い。
威力こそないが、判定は強い。中段やEX技の登場により、ブロッキングさせずに相手を崩すことが可能なため、
ブロ肯定派・否定派の戦いが永遠に続いていた。
最終的にはブロ肯定派の勝ちだったと言える。 名勝負数え唄の末に、スーパーキャンセル連続技を全弾ブロッキングする猛者が
続出したのだ。 プレイがここまで進化するとは全く思わなかった。
神動画が横行し、ブロッキングがとても素晴らしいシステムであったように映るようになったが、
実際、その道は、3D格闘に馴染む道よりも遥かに険しいことをここに記しておく。
ブロッキングは、(自機左の場合)6〜ニュートラル〜6〜ニュートラルで連続入力できるものであるが、微妙なラグタイムがあるので、
連続ブロッキングは、見た目ほど簡単ではない。
ちなみに、スト31までは、6〜ニュートラル〜4〜ニュートラル〜6〜ニュートラル〜4〜・・・・・と入力することで、
隙なくブロッキングが続く、ファジーブロッキングなる技が存在した。ひどいものである。
これはスト32になって、やっと改善された。
それでもなお、SGGKというブロッキングを含ませた強力なハメ攻撃が存在する。
ブロッキングは、極めれば恐ろしく強力なシステムなのため、
初心者が上級者を倒すことは、まずありえない。
しかし、極めるまでのブロ派、否定派の闘いはあまりにも熱かった。
この時期が、このゲームの最も熱い時期だったと思う。 それはファジーによって打ち砕かれた。
相手を崩すのは、投げが一番効率がよく、かつ強力なため、投げゲーだと非難されることもある。
■ システムのごった煮 ■
ブロッキングの陰に隠れているが、なかなかこのスト3、スト33というゲームは、システムに溢れており、
逆に使いこなす必要のあるゲームである。
●リープアタック(小ジャンプ攻撃。なぜかすさまじいほど入力方法や、判定が変化した技。空の小ジャンプはできない。)
●大ジャンプ(いわゆるスーパージャンプ。2〜8入力。空対空に強く、キャンセル技。
大ジャンプで技をキャンセルさせて、通常技対空〜追いかけるというテクいことも可能。
反対に大ジャンプの飛ぶまでのラグを必殺技やSAでキャンセルする技も存在する。
そうすることによって、その場で複雑なコマンドの技を繰り出すことが可能になる。)
●パーソナルアクション(いわゆる挑発。キャラによってパワーチャージしたりできる。)
●EX技(32より登場。必殺技をパワーアップできる。多段になったり速度があがったり、投げ無敵がついたりと便利。ゲージ消費。)
●ターゲットコンボ(いわゆるチェーンコンボ。小中大、P〜Kというチェーンのルールにとらわれない、キャラごとに定められたチェーンコンボ。
当然、ターゲットコンボがないキャラもいる。)
●グラップルディフェンス(いわゆる投げ抜け。小P小Kの同時押しで、投げる意思がなくても、投げ抜けはできるようなシステムに変わった。
しゃがグラもその一つ。)
●クイックスタンディング(ダウン時、レバー2ですばやく起き上がることができる。一連のカプコンゲームの移動起きに比べるととても地味。強力さも薄い。)
●溜め分割( 溜め攻撃を、1溜め3、1溜め6と別方向的にすばやく入力すれば、溜めが解除されないテク。
システム的に補助されていたのかは不明。 溜め攻撃が連打できるたり、前ダッシュから溜め技を撃つことができる。)
細かい話でいけばまだあるが、これらを巧みに組み込んでいかなければ、戦いが成立しない。
これが格闘ゲーム初心者にできるとはとても思えない。中級者でも怪しいと感じるほどだ。
特にSA(スーパーアーツ。いわゆるスパコン。スーパーコンボ。超必殺技。)を
コンボに組み込むのが難しい。 必殺技をSAでキャンセルするのが主流なので、余計に難しい。
コマンドの重複を読み取っているので、すばやくレバー操作する必要がない。
反面、すばやい動作では、ほとんどコンボの成立に間に合わない。
ターゲットコンボ〜波動拳〜波動拳二回入力のSAを波動拳一回入力で成立させてキャンセル〜コンボ成立
という風にやる。 慣れるまで時間がかかるが、一度極めれば、なかなか失敗しないし、
短時間に入力を終了させることができる。
すばらしい。すばらしいが、すさまじい初心者置いてけぼり状態なのは、誰でもわかることである。
■ 謎だらけ空中コンボ ■
ストゼロ3、スト3は、チェーンを軸としない2D格闘の中では、すさまじく空中コンボが決まるゲームである。
ストゼロ3は、しゃがみキャンセルという極悪な裏テク(無限コンボ)があるので残念な部分はあるが、
空中コンボそのものは、スト3とよく似ている。
ジャンプ攻撃や地上の攻撃を当てると、空中にお手玉するので、それを拾っていくだけである。
それが、このスト3には、どういうリミッターがついているのか、結局解明されていない。
限定コンボで気絶確定コンボも沢山ある。SAを利用したコンボでは、弾数に制限があるが、
通常技や単発必殺技でつなげば、すさまじく無限に近く当たる場合もあるし、よくわからない。
多段コンボには、かなりのダメージ補正があるが、空中コンボは、それも謎である。
よって、ユン・ユリアン・オロ・まこと・Qの爆発力に驚くのは、大体、補正がかからなかった場合である。
こういった不確定要素が多いのは、2D格闘ゲームとしてはめずらしく、好意的な部分である。
■ 三強と三凶。そしてそれは永遠に。 ■
ブロッキングのせいで、単発の牽制に使える通常技の強いキャラ、攻撃にも反撃にも使えるSAを持つキャラがどうしても強い。
春麗・ユン・ケン。これが三強である。
この三強があまりに強すぎるゲームなのだが、それを追うように、ゲーム性を打ち砕くほどの爆発力を秘めたキャラを三凶と呼ぶ。
ユリアン・ダッドリー・まことが三凶である。 この三凶の逆転劇には、感動すら覚えることがある。
では、他のキャラが弱すぎるのかと言えば、
ショーンとトゥエルブを除くキャラたちは、大会で何度も上位を脅かしてきた実績がある強さを持つ。
バランスがいいゲームでは決してないのに、ブロッキングを絡めた攻防の腕如何でどうとでもなるゲームなので、
マニア人気の耐えない要因はそこにあるのだと思う。
CVS2(カプコンvsSNK2)でも、ブロッキングシステムに命を賭けるブロッキングマニアは、まぶしいものであった。
今現在は、対戦レベルが高騰しており、もはや一般的には『見るゲーム』である。
しかし、このゲームの地味な功績が、現代の読みあい重視な対戦ゲームを生んでいることを
忘れないようにここに記したつもりである。
超個人的には、スクリューパイルドライバーに匹敵する、
説得力のある投げ技、ギガスブリ―カ―を生みだした作品として心に刻まれている。