Virtua Fighter2


■ 格闘ゲームの怪物 ■


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 ヴァーチャファイター2。

 説明不要な超名作であるが、初代ヴァーチャファイターが名作でなかったわけではない。

 むしろシンプルなゲーム性は、初代で出来あがっており、

 そのインパクトは、初代のそれにかなわない。

 ポリゴンといえば、ワイヤーフレームで、ノロノロと動く代物だったが、

 初代バーチャは、30フレームで生き生きとキャラクターが動いていた。

 飛び道具のない格闘ゲームなんて、キャラの性格付けが甘く、楽しめないんじゃないのかなんて発言が、

 邪推の域を脱していないことは、歴史が物語っている。

 バーチャ2が、発表され、30フレームが、60フレームになり、

 一度でも60フレームを体験してしまうと、30フレームに帰れない。

 キャラの性格付けは更に顕著になり、怪物ゲーム・バーチャ2が登場した。

 そのブームは、社会現象まで引き起こし、社会的浸透性を考慮すれば、

 かのスト2すら凌ぐ勢いがあった。 


 ちなみにバーチャを冠するゲームとしては、バーチャフォーミュラや、バーチャストライカー、

 バ―チャコップなど多岐に渡ったが、今となっては、
 
 バーチャといえばバーチャファイターのことである。


 ■ シンプルな操作系 ■


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 ボタンは、ガード・パンチ・キックの3ボタンである。(以後の作品では、エスケープボタンなどが追加される。)

 あまりにシンプルすぎる気もするが、 必要十分な操作系であることを

 自身で証明した。

 レバー入れ攻撃の大半が【 中段】 になるという特性も非常にわかりやすい。

 

 下段は、パンチ・キック共に貧弱で、

 強力な下段は、コマンド技であったり、出が遅いことから、上段ガードが安定である。

 これはスト2の常識を払拭したことと、しゃがみガードによる硬直を減らし、

 よりアクティブな対戦を生みだした。

 

 結果、攻防の要が【 中段 】と【 投げ 】に集約される。 

 バーチャは、中段と投げを狙うゲームだと、ここで断言しておきたい。

 このシステムは、後のライバルゲームである、『 鉄拳 』に完全にパクられる。

 

 しかし、中段と投げを狙うゲームでありながら、バーチャと鉄拳は、かなり違う方向に進化した。

 


 ■ 投げ抜け ■


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 近年の3D格闘、バーチャと鉄拳を考慮した場合、【 投げ抜け 】が

 必要不可欠だが、まだ、バーチャ2では、通常投げしか投げ抜けがなかったため、

 二択行動を仕掛ける際に、通常投げを使わないのを当たり前にしてしまうと

 投げ抜けがないのと同じである。

 名作の名を欲しいままにしてきたバーチャ2において、

 【 投げ抜け 】がそこまで大切ではないことから、近年の3D格闘においても、

 本来は、それほど重要なファクターではないはずなのだが、風潮は、必要不可欠なものになっている。

 

 【 投げ抜け 】が大切ではないという言葉の意味は、下段攻撃で強いものが少ないため、

 (強い下段は、無茶苦茶強い)

 上段ガードが強力なゲーム性が確立されており、上段ガードを崩す手段として投げが機能し、
 
 下段ガードを崩す手段として中段が機能するゲームの作りだからなのである。

 投げを回避するなら、しゃがめばよいのである。

 フレーム管理されたゲームでありながら、しゃがみは1フレームで行われるのは、

 そのためである。

 

 投げはしゃがめばよいという発想が生きてこそ、

 しゃがみ投げが【 読み一点で、成功する希薄な投げ 】という流れが成立するのである。

 投げ抜けが常識になって世界では、読み一点でしゃがみ投げを成功させる場面は近年みられなくなった。

 ということはつまり、このゲームでは頻繁に見られるということなのである。


■ バーチャのゲーム性 ■


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 中段と、投げで2択するゲームであると前述した。

 しかし、同じゲーム性をもつ『 鉄拳 』とは一線を画した。

 それはなぜなのか。

 

 【立ちガード】→投げか、下段で崩す。 

          まだ当時は、しゃがみパンチが下段であり、もっとも使える下段は、しゃがみパンチであった。

          しゃがパンとして、忌み嫌われ、後にバーチャ・鉄拳ともに中段扱いになり、リーチも短くなった。
          
          ここはバーチャ、鉄拳ともに同じである。

          鉄拳は、レバーガードなため、後ろに下がってしまうと思われがちだが、

          ニュートラルで上・中段がオートガードされるため、感覚的に同じである。

 【しゃがみガード】→中段で崩す。

          ここに鉄拳とバーチャの違いがある。            

          バーチャは、中段で崩すのが基本である。 よろめきや、尻もちを誘発させてコンボに持ち込む。

          しゃがみ喰らい(2Dにも存在し、重要)が初めて意識され始めたころである。

          もしくは、カウンター狙いである。

          バーチャは、基本、中段のカウンターヒットで少し浮いた敵に空中コンボ決めるゲームなのだ。

          一部、カウンターでなくても浮く『 浮かせ技 』や、通常ヒットから技をつないで無理矢理相手を
       
          浮かせることもできるが、キャラによるし、システムでサポートされているものではない。


  
          鉄拳は、違う。 崩しを誘発する技では、有利もしくは5分のフレームを勝ち取るもので、
 
          そのまま攻防は継続する。 崩しから、そのままコンボが入るものもあるが数は少ない。

          反面、中段の中に【 浮かせ技 】がシステム的に存在し、

          ヒットすればとても多段なコンボを入れることができる。

          無論、技がカウンターヒットしても、空中コンボは入る。

          コンボチャンスが多く、一度のコンボダメージが大きい鉄拳は、コンボゲーであり、

          数回読み勝てば、試合が終わってしまうゲームである。
  

          反面、バーチャは、中段と投げで2択を迫る攻防が完成されており、
   
          このバーチャ2でゲームとしての完成を見ており、これ以上もこれ以下もないのである。

          その後、鉄拳要素も取り入れたりしてバーチャは迷走していくのだが、

          【 投げ抜け 】が、自動、保険などが効くようになったことで、競技性があがり、
    
          元々持っていた攻防の楽しさを大きく損なう結果を生んだことに気がついて欲しかった。


 ■ 笑いを誘うゲーム ■


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 バーチャは、リングアウトのあるゲームで、リングアウト狙いという不毛な

 試合運びが存在することから、(鉄拳にリングアウトはない。反面、無限ステージに賛否がある。)

 賛否両論が飛び交うのだが、この微妙な段差が織り成す怪現象が、

 バーチャ1、2ともに後を絶たず、爆笑を生んでいた。

 殺伐とした時代にあって、対戦で勝っても負けても笑える要素は、現在では大切になってきたが、 

 当時はバグ以外の何者でもなく自然淘汰(修正)される。

 今から考えれば惜しい限りである。



 ■ 進化おけるゲーム性の崩れ ■


 前前項ですでに説明は終了しているが、

 バーチャは、投げ抜けを確立させたことによって、

 3D格闘の王座から転落した。

 

 おそらく、そういう見方をしている人間は少ないと思うが、

 上段・下段ガードに対する有効な行動を突き詰めると、

 保険の効いた投げ抜けが、かつて持っていたバランスを
 
 崩した事実が、解ってもらえるのではないかと思う。



 鉄拳では、脊髄反射で投げ抜けするしかないのだが、

 それもいつしか当然のこととなっている。

 バーチャでは、投げ抜けを仕込むことが当然になり、

 守りが堅く、初心者にはとてもハードルの高いゲームになってしまった。

 とにかく浮かせ技当てて、コンボすれば勝てる鉄拳に人が流れたのも
 
 当然のことだったであろう。


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 もはや戻れない進化によって、ゲームバランスを崩したバーチャ。

 ゲーム性的にはほぼ完全移植ともいえるサターン版で、ゲーセンと家庭用の差を

 無くし、一代でゲーセンを終わらせてしまった張本人でありながら、

 自信の進化で、身を滅ぼしてしまった希薄な例である。